『インシデント』とは,「事象, 事件, 事例, 出来事, 偶発的な, 入射」を意味する。医療の世界では,「偶発」や「偶然」 という表現で用いられ, 不幸にして起きてしまった ”偶然の失敗 ”を示す。
日常診療の現場でヒヤリ・ハッとした経 験に関する報告書である『インシデントレポート』をよく耳にする。企業でいう「始末書」に近いもので, 多くの人は 悪い印象を持つかもしれない。しかし, 裏を返せばある一つの症状の検査で偶発的に様々な所見を見いだすこと の出来る ”チャンス ”でもあると捉えることができる。
現代美術という領域は, さまざまな表現媒体があり絶対的な評価軸が決まっていない。受容する側も多様な価値観を伴い正解と呼べる答えを導きだすことは困難である。それぞれの作品には, 異なったコンセプトが内在されているが, 共通して言えるのは「受容する側の存在を意識している」ということだ。観るものの想像力を喚起するものや意識の幅を調整したり, 解きほぐしたりするもの・呼応することで寄り添えるものなど多種多様である。そこには, 視覚的な心地よさのためだけにある訳ではなく必ず伝わる意思・意識のズレが孕んでいる。
アーティストが作り出した空間の中に存在する作品と対峙することで場所・記録・経験など多くの関係を発見し,感してもらうことで何かを見つける”チャンス ”になるのかもしれない。
第2回目となる本展の会場は, 約240年の歴史のある「八戸酒造株式会社」に加え, 八戸市民の台所でもある 「八戸市営魚菜小売市場」で開催する。”まちおこし ”としての芸術祭ではなく, 確固たる意思を持ち度重なる挑戦・ 失敗・逸脱の繰り返しによって物事と真摯に向き合ってきた杜氏や蔵人, 漁師やイサバのカッチャ(市場のお母さん), 湊人, そしてアーティストによる『インシデンツ』という名の ”アップライジング(決起)”である。
「INCIDENTS 2016 / インシデンツ 2016」
2016年1月30日(土)〜2月21日(日)
※月曜日休館
10:00 −17:00
入場無料
協 賛
八戸学院大学・八戸学院短期大学, PROALLC .
八戸市( 多文化都市八戸推進事業助成 )
協力
八戸酒造株式会社, 現代芸術教室アートイズ, Takashi Somemiya Gallery,
タカ・イシイギャラリー, YKG Gallery, 日本大学芸術学部